今日から土用入です。
土用とは、『立春、立夏、立秋、立冬の前の約 18日間』のことです。
つまり、これらの土用の期間は季節の変わり目の時期ともいうことができ、四季に合わせて4回あります。
また、土用は暦の雑節(ざっせつ)の一つで、他の雑節には節分、彼岸、八十八夜などがあります。
4つの土用のそれぞれは、春土用、夏土用、秋土用、冬土用とも呼ばれ、大体の目安としては次のようになります。
冬土用:1月後半~2月初め
春土用:4月後半~5月初め
夏土用:7月後半~8月初め
秋土用:10月後半~11月初め
夏土用の期間は暑中(しょちゅう)ともいわれます。
そして、暑中見舞いを出す時期でもあります。
土用の始まりの日を「土用入り」、終わりの日を「土用明け」といいます。
土用の期間中の「丑(うし)」にあたる日が『土用の丑の日』となり、「土用の丑」とも呼ばれています。
それぞれの土用の期間中に丑の日が2回ある場合、二番目の日を「土用の二の丑、二の丑」といいます。
今年でいえば、8/1 ・11/5 が土用の二の丑です。
土用は、中国の五行思想(ごぎょうしそう)に由来しています。
五行思想とは、万物は木・火・土・金・水の5つの元素から成り立っているとするもので、五行説(ごぎょうせつ)ともいわれます。
そして、五行のそれぞれは次のように考えられています。
木 … 春の象徴
火 … 夏の象徴
土 … 「季節の変わり目」の象徴
金 … 秋の象徴
水 … 冬の象徴
このことから、先に述べた土用の期間が定められていて、「土旺用事(どおうようじ)」、「土用」といいます。
土用の期間中は、土いじり、動土(どうど)や土木工事などは慎んだほうがよいとされています。
これは、土用は土公神(どこうしん、どくしん)という土の神様が支配する期間だからです。
ただし、土用であっても間日(まび)であれば支障はないとされます。
この間日は季節ごとの土用によって、それぞれ次のように十二支の日で決められています。
春土用 - 巳・午・酉の日
夏土用 - 卯・辰・申の日
秋土用 - 未・酉・亥の日
冬土用 - 寅・卯・巳の日
では、なぜ土用の丑の日に うなぎ を食べるのでしょうか。
これは、江戸時代の学者、発明家など多くの肩書を持つ平賀源内(ひらがげんない)によるといわれています。
うなぎの旬は、本来は冬です。
そして、夏場に売り上げが伸びないことに困っていたうなぎ屋さんのために、源内が『本日 土用丑の日』というコピーをつくりました。
これを店先に貼り出したところ、大当たりしたのです。
もともと、『丑の日に「う」のつくものを食べると病気にならない』という言い伝えがありました。
例えば、「うり(瓜)」「うめぼし」「うどん」などです。
暑くて食欲がすすまない時期には、栄養のある物を食べて乗り切るという先人の知恵です。
これと相まって、土用の丑の日に うなぎ を食べる風習が広まり、今日まで続いているわけです。
それにしても、二百数十年後まで影響を与えるコピーを作った源内には、ただただ感心してしまいます。
先に述べたように、土用の食べ物としてはうなぎが有名ですが、他にも以下のようなものがあります。
これらは、特に丑の日とは関連がありませんが、うなぎと同様に「土用の丑の日に食べると良い」とされることが多いものです。
土用餅(どようもち)は土用入り、あるいは土用の期間中に食べるもので、あんころ餅やひと口大の餅に餡(あん)を乗せたものなどがあります。
主に関西・北陸の地域(京都、滋賀、福井など)で食べられていて、菓子店で扱うものは夏土用の限定商品とされているものが多くみられます。
土用蜆
蜆(しじみ)の旬は年に 2回あり、夏のものが土用蜆(どようしじみ)、冬のものが寒蜆(かんしじみ)です。
この土用蜆を夏土用の期間に食べるのが有名です。
土用卵
夏土用の期間に採れる卵は滋養に富んでいるといわれていて、この期間中に食べることが多く見られます。
なお、冬の時期の卵も栄養価が高いといわれていて、大寒(だいかん)の卵、寒卵(かんたまご)はとても人気があります。
土用に関連して、土用干し(どようぼし)というものがあります。
これは主に夏の土用に行なわれるものですが、次の 3種類があります。
また、土用干しにまつわる言い回しも挙げておきます。
衣類や書物を陰干し(かげぼし)して風を通すことで、虫がついたりカビが発生することを防ぎます。
一般的には虫干し(むしぼし)といわれ、特に本の場合は曝書(ばくしょ)ともいわれます。
田の土用干し
強い稲を育てるために、田の水を抜いて放置することです。
これによって田は乾くので、稲は地中の水分を求めてより深く根を張るようになり、台風にも強いものになります。
また、一定期間 田を干した後に水を入れると、稲は水をよく吸うようになって良い穂が実ります。
梅の土用干し
梅干しをつくるときに、6月頃に収穫した梅の実を塩漬けにして 3日位日干し(ひぼし)にしますが、これが土用干しと呼ばれています。
土用干ししたものを本漬けしたものが梅干しとなります。
雪駄の土用干し
雪駄(せった=草履:ぞうりの裏に革:かわを張った履物)を干すと反ってしまうことから、「反っくり返って、威張った態度で歩く人」のことをいう言葉です。
上記の 3つの土用干しと違って、夏の土用との関連はありません。
また、土用殺(どようさつ)というものがあります。
これは、「凶(きょう)」とされる方位(ほうい=方角とほぼ同義)のことです。
下表のように 4つの土用それぞれについて決まっていて、毎年同じ方位となります。
冬土用 北東
春土用 南東
夏土用 南西
秋土用 北西
季節の変わり目なので、体調には気をつけてゆっくり頑張りましょう。